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日陰名栗山(後半)

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2013年2月3〜4日、日陰名栗山に行ってきました。前半は日陰名栗山に登ったところまでの話、後半は避難小屋到着からの話です。一人で色々と考えたことを文章にしたので長いです(笑)。



【登山ルート】
1日目:鴨沢 → 七ツ石小屋 → 千本ツツジ → 日陰名栗山 → 鷹ノ巣山避難小屋(テント設営)
2日目:(テント撤収) → 水根山 → 城山 → 六ツ石山 → 奥多摩湖 → 鴨沢


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日陰名栗山からの急な斜面をくだってすぐに避難小屋に到着。15:00頃。しかし避難小屋の扉を開けることはしませんでした。人がいる気配はしなかったですが、もしもいたとしたら不用意に開けるのもなんですし、そもそも僕はテント泊に来たのです。


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避難小屋前のフラットなエリアを見渡しますが誰もおらず。リスの一匹も歩いていません。この時は「おお〜!独り占めか!すごく静かな夜を楽しめるぞ」とワクワクでした。さて、どこに張ろうか?これだけ選びたい放題だと逆に困りますね。雪は"いかにも残雪"というジャリジャリな感じで10〜20cmぐらい積もっていました。冬の地面はかなり硬いので雪の上に張ることに。

足でなんとなく地面を均してクフ・タイベックを地面に広げます。今回は雪にも対応できるようにMSRのグラウンドホグ ステイクを4本と、いつものVargoのチタンペグを4本持ってきました。それぞれのペグを試しに打ってみると、すぐに硬い地面に到達してほとんど刺さらず。ペグをジャリ雪に埋めて固定できそうな雰囲気でしたが、翌日掘り出すのが大変そうなのでその辺に落ちていたサインペンぐらいの太さの枝をペグのように雪に刺してみると意外にカッチリ固定できたので、今回はこれでいくことにしました(達成感)。


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ペグには軽く手こずりましたが、無事に張れました。沈みゆく夕日に向けて。Aフレーム用のDPTEを持ってきたので今回は室内が広い〜。こうして見ると、テントってごちゃごちゃテントだらけの中に立っているよりも静かな山の中に1つ立っているほうが凛としていてかっこいい。さてと。まだ16時前。時間はたっぷりあるので「マークスの山」を読むことにします。自分の城の中でのんびりと本を読む。心地良い時間です。

あ!そうだ。水はまだ1.3Lぐらいはあるけど、明るいうちに水場を確認しておこう〜!と思い、水場を確認しにいくと…枯れておりました!思わず「うわ」という声が出ます。気温も高かったので、枯れているなんて思いもしませんでした。甘い。まだまだ考えが甘いですね。今はインターネットもあるわけだし、水場の確認はできたはず。反省しつつテントへ戻りました。

17時にもなると夜ご飯にします。前回の南アルプスでは頑張ってキムチ鍋にしましたが、今回はちょっと手抜きで辛ラーメン。水を追加入手できなかったので節約モード。ラーメンを作るのに必要な水の半分は持参分、もう半分はそこらにあった雪を溶かして使います。沸騰させてる間はコッヘルの中に舞う小さな枯葉や枝の破片をスプーンで取り除く作業。90%ぐらいのゴミは取り除き、後の10%の小さい破片は見なかったことに(笑)。

ラーメンの麺を食べた後は、家から保温袋に入れて持ってきた冷凍ご飯をスープに投入して雑炊にして食べました。美味かった〜!SOD-300、マイクロレギュレーター搭載なだけあって火の勢いは申し分ありません。


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夕食も終わると次第に暗くなっていき、太陽は山の向こうへ沈んでいきました。日が沈んだ後の気温は0℃。2月の山にしては無茶苦茶温かいと思います。18時には食事が終わり、朝が早かったのですぐにでも眠れそうな感じですが今ここで寝たら変な時間に起きてしまうことは確実。頑張って起きてないと。ということで「マークスの山」の続きを読むことにします。と、けっこう近くでキューーーン!と鹿のなく声が。思わずビクッ!とします。

それまで太陽もあり明かったので「貸切で最高!」なんて思っていたのですが、鹿がかなり近くで鳴く声で一気にアウェー感に包まれました。現在、この空間は完全に動物が支配しているんだなぁ…というアウェー感。今度はさらに近くでキューーーン!という鳴き声。不安をかき消すために、僕は舌をコーーーン!と大きく鳴らしてみたのですが、鹿は反応するかのように(!)キューーーン!と返してきます。コーーン!キューーン!コーーン!キューーン!…ビックリして帰るかと思ったのに今度は雪の上を歩いてくるザッ、ザッという足音も聞こえてきました…!

これはアカン!と思い、「こっちは人が沢山いるんだぞ」というのと、純粋に「笑える話を聞きたい」という理由から爆笑問題のポッドキャストを音量大きめで流してみました。ここでは僕一人なので音を出して大丈夫なのです。しばしポッドキャストを聞いて気にしないフリをしていると、気づいた頃には鹿の気配はまったく無くなっていました。

しかし、孤独。

普段のテント泊山行では、あまり混んでいないといいなぁ、静かに過ごしたいなぁ、なんて思いながらテン場を目指しているぐらいなのですが、その山域でおそらく自分一人だけが薄いシェルターの中でモゾモゾしていると思うと今までに感じたことのない種類の孤独が訪れるのを感じました。

周りに誰もいない。いるのは動物だけ。真っ暗な夜。冷たい風。木々が揺れる音。次回はキャンドルランタンを持ってこよう。なんだか孤独に抵抗できる気がします。そしてポッドキャストはいい。最高。爆笑問題さん、ありがとう。

「じゃぁ、もう一人で山に泊まるのは嫌なのか?」というと、そうではないのです。この孤独感はなかなかの重さがあるけども、所詮自分でコントロールできるレベル。極論、ヘッ電を点けて夜の山を下れば車がそこそこ走る道路に出ます。なので孤独を楽しんでいる感覚に近いかもしれません。2月の冬山でそれに負けないレベルの登山用具に身を包み、「孤独だ…」なんて思いながらヘッ電の明かりで本を読む…なんて贅沢な遊びでしょうか。と同時に、なんて根暗な遊びなんでしょうか(笑)。

南極大陸を横断しようとする冒険家と比較するのはおこがましいとは思うのですが、この孤独の種類は冒険家が感じているものと少しだけ近いものがあるんじゃないかしら?「生きているんだ」という感覚。まぁ、明らかに大袈裟ですが。…そんなところまで妄想が飛躍するほどキンキンした夜となりました。

20時頃になったので、家で毎日飲んでいる135mlのスーパードライを空けて眠りにつくことにしました。シェルター内の気温は-2℃くらい。300SPDXで大正解。まったく寒くなく眠ることができましたが、夜中クフ・タイベックと地面の隙間から入ってくる風が少し冷たくて目を覚ましました。寝れないことはないのですが、冷たい風が気になったので外に出てジャリ雪を蹴り砕きながらシェルターにかけると、地面との隙間をなんとか埋めることができ、風も弱くなったので再び眠りにつきました。


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5:00頃、起床。シェルターから顔を出して外を確認してみると、粉雪が舞っていました。もちろん、まだ日は昇っていません。夏ならとっくに登って行動をはじめられるのに…なんて思いつつ朝からエスプレッソパスタを作ります。残雪を使った節水スタイルで。これ、パスタが意外と長いまま袋に入っており、コッヘルからはみ出て大変でした。

あと、何度かクフ・タイベックを使用してきて、初めて結露っぽい結露を体験。シェルター内の壁面を触ってみるとシットリし、寝袋も少し湿っていたのでした。たぶん、シェルターと地面の隙間を雪で埋めたうえに、気温も高かったのでどうしても換気が追いつかなかったのでしょう。

片付けをしているうちにちょっとづつ明るくなってきましたが、粉雪は舞ったままですし、どうやら今日は曇りなのか周りの景色は灰色です。昨夜からの孤独感と灰色の景色はこれ以上にないほど上手く溶け合い、朝からテンションをどんよりさせるのに十分な力を持っておりました。今日はできれば六ツ石山を経由して奥多摩湖に下りバスで鴨沢まで戻りたい。あまりに天気が悪そうだったり、バスの時間までに間に合いそうもなければこのままピストンでもいいかな…と思案しましたが、バスにはギリギリ間に合いそう。最悪、走ればいいか!と決意し、未踏の六ツ石山方面へ進むことにしました。

6:30頃出発。鷹ノ巣山はいきなり巻きます。時間がないので(笑)。


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カラーフィルムで撮影してるのにモノクロみたいです。これでもまだマシなんです。右手下方に並走する巻き道はもっと物悲しく…。途中、耐え切れなくなり尾根に上がってきた次第であります。


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尾根を進んで城山に到着。この景色!どよ~ん。決してハッピーな気分になる雰囲気ではないのですが、あと数時間後には麓の温泉に浸かっていることをイメージすると楽しむことができました。それに、一見すると暗くて冷たくて静かで色もない景色の中にも無視できない美しさがある気がします。いや、確実にあります。この感じを作品に込めて表現する人もいますよね。映画とか音楽とか絵とか。なんてことを考えながら音もなく降る雪の中を歩きました。


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六ツ石山の分岐。ここから石尾根を右に曲がって下っていくのですがこっち?あれ?これトレース?と、iPhoneのGPSを片手に10分くらい迷いました。かなりギリギリの時間設定の中で下っているのでちょっと焦りました。


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トオノクボまでくるとモノクロの世界は終わり、温かい冬晴れの景色に変わってきました。さっきまでいた世界はまるで夢の中だったかのような、そんな不思議な気分です。しかし、このあたりはけっこうな急斜面でゆっくりおりることはできず常にブレーキをかけつつの小走り状態になったので太ももへの負担が半端ない!下山後、4日ぐらい激しい太ももの筋肉痛に悩まされることになりました(笑)。


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バスの時間の10分前の9:45、奥多摩湖に無事下山。奥多摩湖周辺はとても晴れており気温も10℃近くあってほのぼのしていました。この暖かさにホッとすると同時にあの雪が降る山が気になるのでした。そして時間通りにやってきたバスに貸切状態で乗り込み、日を受けてキラキラ光る奥多摩湖を左手に眺めながら車が停めてある鴨沢まで戻りました。

そのまま車を走らせて前から行ってみたかった小菅の湯に。想像していた通り、大きめの日帰り温泉施設で全体的にゆったり。内湯も露天湯ものんびりできてよかったです。お食事スペースでいわなの蒲焼定食を食べて、併設されているお土産屋で妻へのお土産を買って帰路につきました。

今回の1泊2日、かなり文字量の多い記事になってしまいましたが、それでも語り尽くせないほど色々と体感することができました。またいつか、一人であのあたりに行ってみたいです。

by yama-oson | 2013-02-04 20:01 | 山行 (奥多摩・秩父)

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