黒部五郎岳(2日目)
2011年 09月 01日
1日目、台風を避けるために行程を前倒しして霧雨降る雲ノ平に到着しました。
2日目は天候に応じて鷲羽岳・三俣蓮華岳を経由して黒部五郎小舎を目指します。
【登山ルート】
1日目:折立 → 五光岩ベンチ → 太郎平小屋 → 薬師沢山荘 → アラスカ庭園 → 雲ノ平(設営)
2日目:雲ノ平(撤収) → 三俣山荘 → 三俣蓮華岳 → 黒部五郎小舎(小屋泊)
3日目:黒部五郎小舎 → 黒部五郎岳 → 赤木岳 → 北ノ俣岳 → 太郎平小屋 → 折立
まだ暗いなかヘロヘロ(昨夜の疲れっぷりが見てとれる)の妻のテントを見ると
すでに中で灯りが動いているので元気に起きたようです。ひとまず安心。
何より嬉しいのが雨が上がったこと!快晴、とはいかないですが綺麗な空です。
実はこの段階では先に進むか引き返すか悩んでいました。
もしもあのまま雨も風も強くなった場合何も楽しくないですから。
テントを撤収しながら妻と相談しますが、恐れていた風が思ったほど強くなかったのと
今朝のほんのり青い空を見ていたら「行こう!」という結論に至りました。
すると、向こうから例の3人組が元気に歩いてきました。
「おはようございます!私たちは韓国で自分の番組を作っています。取材いいですか?」
と例のビデオカメラを向けてきました。そういうことなんですね。
何やらテレビだとかそういう関係で日本の山を登っているようです。
百名山はいくつ登った?とか、いつも二人で?とか少し質問すると
「では!」と言って、ササッと水場で水を汲んで戻っていきました。
この段階でカメラをしきりに撮っていた理由がわかったので、
なんとなく彼らへの警戒心は解かれて「元気だなぁ」という思いだけが残りました。
稜線歩きをしなければならない鷲羽岳は残念ながらパスして進むことに。
ということは2日目の行動時間は6時間ほどなので余裕です。
あ!前にいるのは例の3人組(笑)。でも水晶岳と鷲羽岳を経由すると言ってたので
途中から行く方向が違うので分かれるということ。
ところで僕が着ているパタゴニアのレインシャドーというレインウエア。
昨日雨の中を3〜4時間歩いていたら、徐々に雨を弾かない部分が出てきました。
そろそろ撥水能力を回復する洗剤で洗わないといけないかも。
ここは食堂が別の建物のになっているので入りやすい感じです。
中では雨具をかけるところがあったり、ストーブがゆるく焚いてあったりと快適です。
雨の中を歩いて少し下向きの気分がなんとも明るくなったのでした。
と、ここで妻はもう一つ目的があると言います。それは『黒部の山賊』を買うこと。
なんでもこの三俣山荘は『黒部の山賊』を書かれた伊藤正一さんが建てたもので
その関係でその本が売っているとのこと。というか、その建てる経緯も書かれた本なのです。
リンク先のamazonでは中古しかなく最低でも7,000円以上の値段がついています。
高いものでは29,800円ですってよ!なぜそんなに高いのか…。
写真は帰宅後撮りました
正直最初「山へ来て重い本を買うかねぇ…」と信じられなかったのですが
山小屋の壁に貼ってあった『黒部の山賊』の販促ポスター、そこに書かれていた
本文中の一文を見た時に一気に興味をひかれました。
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黒部でイワナを釣って三俣小屋に泊まったところ、
うわさの通りの山賊の親子がいた。
その夜は難なく床につく事ができたと思ったのもつかの間、
山賊は彼の枕元ですごい山刀を研ぎ始めた。
気味悪くなって神経をそば立てている彼の耳に、
山賊たちの話し声が、とぎれとぎれに聞こえてきた。
「殺っちまおうか」
「どうやって」
「首ったまを刺せばいいさ」
「いつやる」
「朝にしようか」
「にがすなよ」
恐ろしさのあまり、歯がガクガクとして合わなくなった……
(本書『黒部の山賊』より)
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なんか怖い印象ですが決してホラーな感じではなく、『マンガ日本昔ばなし』のような
ちょっと幻想的でコミカルな感じですね。そもそもこの表紙ですし。
実際に読んでみるととても面白いです。このあたりのルートを歩いた人にとっては
さらに面白いと思えるものになるんじゃないでしょうか?
当初、鷲羽岳のようにこちらのピークもパスしようかと悩みましたが
地図を見る限りそれほどきつそうでもないので登ることにしました。
雨も止んだおかげで黒部五郎岳はバッチリ見えます。明日はあの山を登るのです。
というか、この山行の間黒部五郎岳の周辺だけは常に晴れていたような気がします。
山小屋はまったくそれらしきものは見えませんが、どこにあるのでしょう?
しかしまた、けっこう高度を下げていきます。あれだけ登ったのに…!
すると山小屋の屋根が見えた頃になってまた雨が降ってきました。
ええい!このまま行ってしまえ。
でも小さいわけではなくけっこう広々としてました。小屋も敷地も。
ここでも選択します。小屋に泊まるかテン場でテントを張るか。
現段階では多少雨がぱらついているだけですが、台風が近づいていることは確実なので
一応大事をとって山小屋に素泊まりにしました。
するとここでも出会いが。
「テント泊、しないんですか〜」と青いアークテリクスのジャケットを着た
若い男性が話しかけてきました。なんでもテン場は現在自分のテント一つとのこと。
テント場をのぞいてみると本当に一つ。しかもこのテン場、平らだしペグも効きそうだし
なかなか良さそう…一瞬テント泊に変更?と頭をよぎりましたが妻もいるので我慢。
この青アークさんとはいろんな山道具について話が咲きました。
青いゴアライズがかっこ良くみえました。
台風が近づいている平日に山に登る物好きは少ないようで広い部屋を貸切でした!
僕はいつものカレー、妻はそうめんを食べた後、部屋に戻っていろんな準備をします。
すると時間もできたので『黒部の山賊』を読んだり昼寝をしてのんびり過ごしました。
人もあまりいない山小屋は静かで時間が止まったみたいです。
妻とゴロゴロしていると小屋がにわかに騒がしくなりました。
ん?と注意して聞いていると韓国語の数人がワーワーと小屋で受付しているようです。
…あ!あの3人だ!と思わず妻と顔を見合わせます(笑)。
しかも、その大きな会話は隣の部屋に入ったじゃありませんか。
きっと「けっこう綺麗な部屋だな」とか言ってると思うのですが声がデカい!(笑)
先ほどまでの静かな空間が一転、なんとも騒がしい部室みたいな感じに。
こりゃたまらん、先に夜ご飯を食べよう!と自炊室に下りようと思うと鉢合わせに。
「おっ!今朝会った人ですね。お疲れ様です!」と挨拶を交わしました。
僕は妻に教わった角煮丼を、妻はグリーンカレーを食べました。
今回は3泊4日ということでアルコールストーブではなく、
煮炊きのできるガスバーナーを持ってきたので湯煎も容易でした。
ここでまた作戦会議。明日、折立まで一気に下りてしまう(10時間行程)か、
太郎平小屋のテン場(or山小屋)で1泊してから下りる(7時間行程)か…。
しかし遅くなればなるほど台風が近づいてくるのは明白なので
これまた最終日も10時間歩き通すことに決定。そうと決まればあとは寝るだけ。
相変わらず隣の部屋の韓国の人達は腹から声を出しており「夜は静かになるかな?」と
一人心配していましたが、20時くらいには一気に静かになりました。
しかし!なぜか僕がまったく寝れず。iPodでラジオを聞いたりして過ごしたのでした。
外は雨はあまり降ってないものの、次第に風が強くなりゴーゴーと小屋を揺らしています。
by yama-oson
| 2011-09-01 20:41
| 山行 (北アルプス)